シリーズ連載
メディカルライティングの 現状と将来

第 11 回 日本における臨床研究の未来図 2-1

臨床研究に携わる多くの日本の臨床医にとって、最大の負担の一つは研究そのものよりも、論文の作成です。直接的な論文執筆作業以外にも、研究計画書の作成、インフォームド・コンセントの準備、試験結果のデータ化や解析、ジャーナルへの投稿といった複雑で多数の作業が、医師が患者と向きあう貴重な時間を奪っています。しかし現在、日本では、医療、治験における研究エコシステム 2)の導入が着実に進められており、デジタルツールの効率的な利用により、日本の研究者が研究と患者ケアに集中できる時間の確保を助けています。

  • 臨床研究のデジタルトランスフォーメーションの促進

    研究エコシステムの構築には DX が欠かせません。厚生労働省は、医療と臨床研究における DX 3)を積極的に推進しており、データヘルス改革や臨床試験における電子システムの活用に関するガイドラインにより、病院や研究機関は以下のような取り組みを行っています。

  • Electronic Source (eSource) Data Capture

    臨床データを電子的に収集するシステムを指します。普及に伴い、臨床試験に関するデータの管理も迅速に行うことができるようになりました。

  • Electronic Health Record (EHR) Integration

    電子健康記録の統合により、個人の生涯にわたる医療情報を電子的に記録し、異なる医療機関や診療科であっても横断的に情報を共有できるようになります。

  • Telemedicine and Decentralized Clinical Trials (DCTs)

    分散型臨床試験とは、被験者が自宅や地元の医療機関などで参加できる臨床試験の形態です。テレメディスン(遠隔医療)やデジタル技術を活用して、試験の一部または全部がリモートで実施可能となります。

  • Electronic Consent (eConsent)

    臨床試験に参加する際に必要な「説明と同意」のプロセスを、従来の「対面の説明と紙に署名による同意」ではなく、デジタル技術を使ってオンラインで行う方法です。スマートフォンや PC を使って、動画・音声・インタラクティブな画面を通じて説明を受け、電子的に同意を行います。

2024 年に京都大学医学部附属病院で実施された eSource の実証実験では 4)、必要な臨床試験データ項目の 70%以上の項目が病院の EHR システムから自動的に抽出され、症例報告書(CRF)に入力されました。これにより、臨床医と臨床研究コーディネーター(Clinical Research Coordinator:CRC)の両方の時間の大幅削減が確認されています。

参考:
1) 「医療 DX 令和ビジョン 2030」厚生労働省推進チーム

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_210261_00003.html

2) 治験の更なる効率化(エコシステム)について 第9回 創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001230278.pdf

3) 医療 DX について(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html

4) 医師主導治験における臨床データの電子ソース(eSource)による EDC への連携の実現性を確認 https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/030800/?utm_source=chatgpt.com

※本メールは m3.com の QOL 君でお届けした内容を再編集したものです。元の記事はこちらからご覧いただけます。