日本の研究力の低下は長年の課題となっています。研究力の指標とされる論文指標は 2000 年代より、国際的な低下が続いています。また、保健分野(医学・歯学・薬学等)での研究時間の顕著な減少も確認されています 1)。多くの日本の医師が直面する、特に国際ジャーナルへの論文発表を困難にする 5 つの主な障壁を考察するシリーズを、2 回に分けてお送りします。
時間的制約
日本の医師は、長時間の臨床業務とのバランスを取りながら、研究に割く時間を捻出するという過酷なスケジュールに直面することがよくあります。2019 年の調査によると、医師の労働時間は、約40%が週 60 時間以上、10%が週 80 時間以上という結果でした 2)。また、570 人の日本の漢方専門医を対象とした最近の調査では 3)、回答者の 58.1%が、臨床研究を実施する上で最も大きな障壁として時間不足を挙げています。The Lancet の論説でも同様に 4)、多くの医師が、膨大な量の業務遂行ために学術研究の時間を確保するのに苦労していることが指摘されています。これらの調査結果は、時間的制約が依然として大きな課題であり、日本の医師が研究論文を執筆・発表する機会を減らしていることを示しています。
学術論文執筆における言語の壁
国際的な論文発表において英語は最も一般的に使用されている言語であるため 5)、非ネイティブスピーカーにとっては更なる障壁となります。日本プライマリケア学会会員が症例報告の出版で直面する課題を調べるためのある調査では、参加者の 7.4%が英語での執筆に抵抗感を示しており 6)、これは第二言語での学術論文執筆への抵抗感を反映していると考えられます。この言語の壁は、研究結果の明確かつ効果的な伝達に影響を与え、臨床医がインパクトの高い国際ジャーナルへの論文投稿を躊躇させる要因となっています。
伝統的な序列関係の中での働き方
日本の医療現場では、上級医への敬意と尊敬の念が尊重されています。研修医などの「メンティー」は指導医などの「メンター」に強い信頼を寄せ、その指導と経験に頼る傾向があります。研究に携わる際には、多くの若手医師は論文作成と投稿においてメンターの支援を頼りとしますが、ある調査によると、実際にそのようなサポートを受けたのは全体の約 3 分の 2 に過ぎませんでした 7)。若手医師が研究スキルを習得できるよう、包括的でアクセスしやすい論文執筆や投稿支援が求められています。
参考:
1) 令和 4 年版科学技術・イノベーション白書
第1章 我が国の研究力の現状と課題
2) Laypeople's Perspective on Physician Work-Hour Restrictions in Japan: A Cross-Sectional Study
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11638991/3) Survey of attitudes toward clinical research among Japanese traditional (Kampo) medicine specialists and certified doctors affiliated with the Japan Society for Oriental Medicine https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/tkm2.1444
4) Decline in Japan's research capabilities: challenges in the medical field https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)01465-4/fulltext
5) English As the Language of Science https://www.science.org/content/blog-post/english-language-science
6) Barriers to Preparation of Case Reports among Japanese General Practitioners https://journals.lww.com/sjmm/fulltext/2020/08030/barriers_to_preparation_of_case_reports_among.12.aspx
7) Mentoring the next generation of physician-scientists in Japan: a crosssectional survey of mentees in six academic medical centers https://bmcmededuc.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12909-015-0333-2
※本メールは m3.com の QOL 君でお届けした内容を再編集したものです。元の記事はこちらからご覧いただけます。