シリーズ連載
メディカルライティングの 現状と将来

第 5 回 日本の医師が研究や論文作成で直面する障壁 2-2

国際ジャーナルへの論文発表を困難にする 5 つの主な障壁の考察の 2 回目をお送りします。1 回目の「1. 時間的制約」「2. 学術論文執筆における言語の壁」「3. 伝統的な序列関係の中での働き方」に続き、今回は「4. 不足する構造的支援」「5. 特有の医療制度」です。これらの障壁に対処することは、日本の医師にとって、論文作成が効率的に進められる支援環境を構築するために不可欠です。

  1. 4. 不足する構造的支援

    日本の多くの臨床医は、研究活動に必要な時間の確保、資金、論文作成サポート人員へのアクセスといった構造的支援が不十分であると感じています。2025 年に発表された調査では 1)、時間的制約に加えて、回答者の 54.8%が資金不足、51.1%が研究スタッフまたは研究アシスタントの不足を臨床研究実施における主要な障壁として挙げています。さらに、74.3%が統計解析のトレーニングの必要性も指摘しており、これは研究関連教育におけるより広範なギャップを反映している可能性があります。さらに、「働き方改革」では、上司からの指示がない限り研究は労働とはみなされず、研究に費やす時間は、勤務外のプライベートな時間ということになってしまいます 2)。医師の過重労働の削減を目的とした「働き方改革」で、研究力がさらに低下する可能性も懸念されます。

  2. 5. 特有の医療制度

    日本の医療制度は患者ケアと臨床責任を重視しており、医師が長期にわたって研究に積極的に関与し続けることが難しい場合があります 3)。2022 年に International Journal of General Medicine に掲載された論文では 4)、特に総合診療医においては、臨床責任が研究よりも優先されていることが指摘されています。2024 年に BMJ Open に掲載された調査によると 5)、日本の医師の多くは、博士研究よりも臨床専門医研修を希望しています。MD-PhD プログラムや大学院研究プログラムの導入など、研究研修を強化するための取り組みは行われてきましたが、参加率は依然として低いままです 6)。経済的な障壁、硬直した組織構造、キャリアインセンティブの低さといった要因が、研究への長期的な関与を阻み続けています。これらの傾向は、研究の実施と発表が医師のキャリアにおいて、オプションや課外活動としてではなく、優先事項として認識され、適切に支援されるよう、文化的および制度的な改革の必要性を浮き彫りにしています。

参考:
1) Survey of attitudes toward clinical research among Japanese traditional (Kampo) medicine specialists and certified doctors affiliated with the Japan Society for Oriental Medicine

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/tkm2.1444

2) Promoting Research under the Work Reform for Physicians

https://www.jmaj.jp/detail.php?id=10.31662%2Fjmaj.2024-0066

4) Large-Scale Observational Study on the Current Status and Challenges of General Medicine in Japan: Job Description and Required Skills https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8811269/

5) Attitude toward career development in Japanese medical students: a questionnaire survey https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10806647/

6) Physician?Scientist Training System and Development Strategies in Korea https://jkms.org/DOIx.php?id=10.3346/jkms.2025.40.e140

※本メールは m3.com の QOL 君でお届けした内容を再編集したものです。元の記事はこちらからご覧いただけます。